2012年10月24日水曜日

事業継続プラン策定に関するけっこう重要なこと

さて今日は「これって『看板破り』ですよね」の続きです。

なりたろう氏の挑戦を受ける形で、ITストラテジスト資格試験で実際に出た問題の解答を考えてみます。もっとも文章を全部書くつもりはありません。解答に必要な要素と記述の方向性を考えてみます。

とはいうものの、事業継続計画を考えるうえで、けっこう重要なツボが問われているのでマジメに解答します。

設問ア あなたが携わった事業継続計画の策定において捉えた、事業についての社会的責任、事業活動の特性、事業を支える情報システムの利用実態の概要を、800字以内で述べよ。

今から書くことは、実際にBCPを策定するときに非常に重要なポイントになります。BCPの策定にあたっては、自社の事業が「社会的にどのような責任を追っているか」を客観的かつ抜け漏れなく正確に査定することから初めます。実はこれがけっこう難しい。

たとえば B(自社) to B(卸など) to C(エンドユーザー) で製品を供給している製造メーカーがあったとします。こういう会社でBCPの範囲を尋ねると、多くの場合では日頃製品を届けている卸までの供給を再開させればBCPとしてこと足りる、という返事が返ってきます。

そこで私はあえて意地悪に聞きます。「それでいいのですね?被災地の消費者のことは会社として対応しなくてもいいんですね?通常のビジネスの範囲で考えれば良しというご決定ですね?」

製品がスーパーで売っているような汎用品であれば、それほどシビアな議論にはなりません。被災地への貢献をどの範囲で行なうか?という意思決定をすれば良いからです。しかしながら、これが「患者の生命を左右する医薬品」の場合は若干議論が変わってきます。

問題文のなかに「事業活動の特性」とあるのは、このような製品の特性から来るBCPプランニングへの影響を言っているのだと思われます。

BCP策定にあたっては、まず「誰のためにBCPをやるのか?」ということを会社としてしっかり合意形成しておく必要があります(これをやらないと議論のブレる範囲が大きくなりすぎてのちのち収拾に苦労します)

個人的に思うのは、世の中の多くの企業のBCPあるいはBCPの解説本は、自社の事業を復旧させるという視点でしか書かれていません。これは、あたかもマーケティングの考え方が根付いていない会社が、顧客ニーズを省みることなく自社都合でプロダクトアウトしている様子を思い起こさせます。

私自身は、BCPにもマーケティング的視点が必要だとさいきんでは考えています。

設問イ 設問アで述べた事業についての社会的責任、事業活動の特性、事業を支える情報システムの利用実態について、どのように着目して事業継続計画を検討し、策定したか。策定した事業継続計画の概要とともに、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

ちょっとここで暴論を吐きます。

これを言うとITストラテジスト資格試験の模範回答ではなくなってしまうのですが、私自身がお客様のBCP策定支援をしているとき、ITシステムがないと出来ない業務については必ずこういう質問をします。

「ITシステムが止まったらほんとに全部止まるんですか?じゃあサーバーを二重化する以外に解決策はゼロなんですか?サーバーからデータベースをエクセルか何かで落としてアナログな仕事はできませんか?」

結論から言うと、ほとんどのケースではITシステムが必要な業務ステップをぶっちぎることができます。もちろんこの禁断の手をやってしまうと、業務の一部に穴が空いて一時的に「売上と在庫が正確にわからなくなる」なんてことも起こります。

しかしながら、そんなつじつま合わせは「自社の都合」だから後回しでいい、という判断をした会社は実際に存在しています。

問題文のなかにある「どのように着目して」の答えはこうです。「お客様のニーズを優先させるとの決定により、ITシステムは停止したまま在庫のデリバリーを続ける」

ダメだ、私自身はこの資格試験に受かる気がしなくなってきました(笑)

設問ウ 設問イで述べた事業継続計画の実効性を高めるために、工夫した点は何か。更に改善する余地があると考えている項目を含めて、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

えーっとこの質問は勘弁してください。事業継続コンサルタントとして「BCPを作る上で工夫した点」として書けることはいくらでもあるのですが、なんせご飯を食べるためのノウハウなので(笑)

思ってたより長文になりました。方向性は示したつもりですが、これじゃあ不合格だなー。困った困ったー。なりたろうさん、ごめん!

4 件のコメント:

  1. 設問ウ、勘弁しましょう。・・・なんてね。

    ・・・いや~感謝です。流石ですね。

    昼飯のメロンパンをパクつく手をとめて拝読させて頂きました。

    設問イのごとく、敢えて、ITを若干否定した意見、かえって試験官に響くと思います。この試験合格の資格者は、ITを利用しながらも個別最適と全体最適を考え、経営的見地になって経営者をサポートすること。なので、むしろ、Very Good だと本気で思います。

    さて、試験そのものはさておき。

    仰せの通り、「BCP」と云う言葉通りの定義ではなく、企業が自社やビジネスと云う枠・範疇をこえて、備える・対策する・”その”時に適切な行動をとる。これが、マーケティング的視点と云うのであれば、それは、絶対に「是」ですよね。

    プロに失礼ながら、今後もこの公開上、個人的に非公開でご指導仰いで参ります。

    まずは、、、お勧めのBCPの教科書ご推薦お願いします!

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    1. Very Goodという評価をいただき、ありがとうございます。

      自分自身がIT屋だったころのことを思い出すのですが、IT屋はITの問題をITの範囲で解決しようとする部分最適に走りがちです。まあモノやサービスが売れるからという商魂が原因なわけですが、ITの枠外の全体最適の手法を持ち合わせていないという事情もあります。

      経営者は全体最適が考慮されていないITシステムは大嫌い(のはず)です。BCPは「お客さんのニーズ」にターゲットを絞った全体最適であるべきです。システムのバックアップをすぐ冗長化ととらえるのは間違いだと信じております。

      BCPの教科書。うーん。書こうかな。心の底から役に立ったと思える本がないんですよね。うーん。

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  2. 期せず、と言ってしまってはもともこもないですが…。Blog書くこと、面白いですよね。FBも広義の意味でBlogですが。ちょっと違う。

    この我々のやりとりも、読めば、ちょっかい出して下さる方もいると思うのです。

    考えます、拡散の仕組み。
    BCPの生徒としては、自習して質問をさせて頂きます♪

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  3. 確かに面白いです!

    もうちょっと柔らかい話題、間口の広い話題も提供して、絡んでいただける方を増やしたいですね。世の中の社長ブログ、ビジネスブログの研究もしてみようかと思います。

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